目次
ダイジェスト
・原油在庫は375万バレル減少
原油生産量は日量1180万バレルで前週から20万バレルの増加
輸出入では輸入量が675万バレル、輸出量が292万バレルで383万バレルの輸入超過
製油所稼働率は89.7%で0.1%上昇、原油処理量は11万バレルの減少
Adjustmentによる在庫調整は今週は減少側で調整量は63万バレル
・ガソリン在庫は145万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)となり、出荷量の減少で在庫減少へ転じる
ガソリン生産量は17万バレル増加、輸入量は25万バレル減少
ガソリン出荷量は74万バレルの大幅増加、輸出量は21万バレル減少
・留出油在庫は172万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)となり出荷量と輸出量の増加で在庫減少へ転じる
留出油の生産量は8万バレル増加、輸入量は4万バレル減少
留出油の出荷量は27万バレル増加、輸出量は12万バレルと増加
・原油と石油製品を合わせた在庫量は17億7960万バレルで前週より2030万バレルの大幅減少
・オクラホマ州クッシング在庫は105万バレル増加した3470万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は45.7%
・石油製品の出荷量は176万バレルの増加となり好調さの目安である日量2000万バレルを維持
・欧米の新型コロナウイルス・オミクロン株対策強化で需要は弱含みだが、株高に追従
・OPECプラスは年明け1月4日に会合を開き2月の増産量を決定する予定
EIA週間統計の総評
日本時間12月29日24時半にEIAから週間在庫統計が発表された。原油在庫は375万バレルの減少となった。製油所の稼働率は前週比で0.1%上昇した89.7%となったが、原油消費量は前週比で11万バレル減少した1570万バレルとなった。原油相場は在庫の減少を材料に上昇したが高値警戒感から売られて在庫発表後の上げ幅をほぼ削った。その後終盤に再度上昇して引けている。石油製品ではガソリン在庫が145万バレルの減少、留出油在庫は172万バレルの減少となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は105万バレル増加した3470万バレルとなった。
原油生産は日量1180万バレルとなり前週から20万バレルの増加、原油輸入量は前週比で56万バレル増加した日量675万バレル、輸出量は日量5万バレル増加した日量292万バレルとなり輸出入全体としては383万バレルの輸入超過となっている。ガソリン高に対応するため戦略備蓄(SPR)が19万バレル放出されている。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は17億7960万バレルと前週比で2030万バレルの大幅減少となった。
原油と石油製品の在庫(表1)
表1は過去4週間分の結果を示している。原油の在庫は375万バレル減少した4億2000万バレル、ガソリン在庫は145万バレル減少した2億2270万バレル、留出油在庫が172万バレル減少した1億万2240バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は105万バレル増加した3470万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 310減 | 375減 | 471減 | 458減 | 24減 |
ガソリン(万バレル) | 70減 | 145減 | 553増 | 71減 | 388増 |
留出油(万バレル) | 30減 | 172減 | 39増 | 285減 | 273増 |
クッシング在庫(万バレル) | 105増 | 146増 | 129増 | 237増 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。ガソリン在庫、留出油在庫全てで過去5年間の在庫レンジの下限近くとなっており、特に原油在庫とガソリン在庫は過去5年の在庫レンジを下回っている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と表3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は日量1180万バレルで前週から20万バレルの増加。原油輸入量は前週比で56万バレル増加した日量675万バレル、輸出量は前週比で5万バレル増加した292万バレルで383万バレルの輸入超過となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計のAdjustmentは先週から49万バレル減少した63万バレルが在庫を減少させる形で加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1180 | 1160 | 1170 | 1170 | 1170 | 1100 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -19 | -36 | -27 | -24 | -26 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 675 | 619 | 647 | 649 | 648 | 532 |
原油輸出(万バレル/日) | 292 | 287 | 364 | 227 | 293 | 362 |
Adjustment(万バレル/日) | -63 | -13 | 21 | -42 | -24 | 71 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
アメリカの原油輸入国上位10か国の国別内訳と前週からの輸入量の増減は表3の通り。今週はカナダ、メキシコ、エクアドルからの原油輸入が増加した一方で、サウジアラビア、ロシアなどからの輸入が減少した。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 403 | 314 | +89 |
メキシコ | 64 | 50 | +14 |
サウジアラビア | 60 | 38 | -32 |
コロンビア | 18 | 14 | +4 |
イラク | 26 | 35 | -9 |
エクアドル | 30 | 19 | +11 |
ブラジル | 6 | 14 | -8 |
ロシア | 0 | 22 | -22 |
ナイジェリア | 5 | 12 | -7 |
トリニダード・トバゴ | 0 | 0 | +-0 |
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所稼働率は前週から0.1%上昇した89.7%だったが、製油所への原油投入量は前週比で11万バレル減少した日量1570万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産は前週から17万バレル増加した日量1011万バレル、ジェット燃料生産は前週から2万バレル増加した日量149万バレル、留出油生産は前週から8万バレル増加した日量493万バレルだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1570 | 1581 | 1567 | 1578 | 1574 | 1428 |
製油所稼働率(%) | 89.7 | 89.6 | 89.8 | 89.8 | 87.7 | 79.4 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1011 | 994 | 1004 | 956 | 991 | 919 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 43 | 68 | 49 | 55 | 54 | 60 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 149 | 147 | 145 | 147 | 147 | 119 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 11 | 5 | 25 | 4 | 12 | 11 |
留出油生産(万バレル/日) | 493 | 485 | 481 | 491 | 487 | 463 |
留出油輸入(万バレル/日) | 16 | 20 | 45 | 26 | 27 | 61 |
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。ガソリン出荷量は前週から74万バレルと大幅増加した日量972万バレル、ジェット燃料の出荷量は前週から13万バレル増加した日量159万バレル、留出油の出荷量は前週から23万バレル増加した日量405万バレルだった。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 972 | 898 | 947 | 896 | 928 | 812 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 61 | 82 | 62 | 79 | 71 | 91 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 159 | 146 | 160 | 122 | 146 | 121 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 13 | 9 | 26 | 20 | 17 | 5 |
留出油出荷(万バレル/日) | 405 | 382 | 489 | 357 | 408 | 359 |
留出油輸出(万バレル/日) | 129 | 117 | 77 | 121 | 111 | 122 |
石油製品需給(日量)
原油の需要側では製油所稼働率が前週から0.1%上昇した89.7%となったが、原油消費量は前週より11万バレル減少した日量1570万バレルだった。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で17万バレル増加した日量1011万バレル、輸入量は25万バレル減少した日量43万バレルだった。ガソリンの出荷量は前週比で74万バレルの大幅増加となった日量972万バレル、輸出量は前週から21万バレル減少した日量61万バレルだった。ガソリンの生産量は増加、輸入量と輸出量の増減はほぼ相殺したが、出荷量が大幅な増加となりガソリン在庫は145万バレル減と在庫減少へ転じた。
次に留出油は生産量が前週から8万バレル増加した日量493万バレル、輸入量は前週から4万バレル減少した日量16万バレルだった。留出油の出荷量は前週から23万バレル増加した日量405万バレル、輸出量は前週から12万バレル増加した日量129万バレルとなった。生産量はやや増加したものの、輸入量の減少に加えて出荷量と輸出量が増加したため、172万バレルの在庫減少とへ転じた。
ジェット燃料生産量は前週から2万バレル増加した149万バレル、出荷量は前週から13万バレル増加した159万バレルとなった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で176万バレル増加した日量2221万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安の一つであるとなる日量2000万バレルを今週も超えている。今週は原油在庫が275万バレル減少、ガソリン在庫が145万バレル減少、留出油在庫が172万バレルの減少となった。ガソリンや留出油だけでなく、灯油や重油、エタノールなど全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で2030万バレル減少した17億7960万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品のスポット卸売価格となる。今週の燃料の卸価格や原油価格は24日がクリスマスの祝日のため非公開だった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 12/24 | 12/17 | 12/10 | 12/3 | 11/26 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 非公開 | 2.208 | 2.225 | 2.037 | 非公開 | 非公開 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 非公開 | 2.220 | 2.258 | 2.096 | 非公開 | 非公開 |
原油 (ドル/バレル) | 非公開 | 70.93 | 71.71 | 66.39 | 非公開 | 非公開 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果となる。今週のガソリン小売価格は約2セントの下落、ディーゼル燃料の小売価格は約1セントの下落となった。
小売価格 | 12/27 | 12/20 | 12/13 | 12/6 | 11/29 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.275 | 3.295 | 3.315 | 3.341 | 3.380 | 2.243 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.743 | 3.763 | 3.776 | 3.800 | 3.831 | 2.634 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.008 | 4.024 | 4.039 | 4.063 | 4.095 | 2.889 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 3.615 | 3.626 | 3.649 | 3.674 | 3.720 | 2.635 |
今後の見通し
アメリカの原油生産量は前週から20万バレル増加した日量1180万バレルだった。需要面では製油所稼働率が前週から0.1%上昇した89.7%となったが、原油消費量は11万バレル減少した日量1570万バレルだった。原油輸入量は前週比で日量56万バレル増加した日量675万バレル、輸出量が5万バレル増加した日量292万バレルとなり、383万バレルの輸入超過となっている。原油輸入量と生産量が増加した一方で、輸出量や消費量も増加したため原油在庫は357万バレルの減少と在庫減少幅が減少した。
ガソリンは生産量が17万バレル増加した一方でガソリン輸入量は25万バレルの減少となった。ガソリン出荷量は74万バレルの大幅増加、ガソリン輸出量は21万バレルの減少となった。ガソリンの出荷量の大幅増加でガソリン在庫は145万バレル減と在庫減少へ転じた。留出油は生産量が8万バレルの増加、輸入量は4万バレルの減少となった。一方出荷量は23万バレルの増加、輸出量が12万バレルの増加となった。生産量はやや増加したものの、輸入量の減少に加えて出荷量と輸出量が増加したため留出油在庫は172万バレルの在庫減少へ転じた。燃料価格では卸売価格は前週がクリスマスの祝日のため非公開だった。小売価格はガソリン価格が約2セント、ディーゼル燃料は約1セントの下落だった。
全ての石油製品の出荷量は日量176万バレル増加した2221万バレルとなったが、石油製品消費の好調さの目安である日量2000万バレルを今週も維持した。ガソリンやディーゼル燃料に加えてエタノールや液化プロパンなど全ての石油製品と原油を合わせた在庫は2030万バレルと大幅に減少した17億7960万バレルとなった。
新型コロナウイルス・オミクロン株の感染拡大で欧州では都市封鎖や規制強化が行われており、世界の原油需要の減少懸念が浮上している。一方で、アメリカでは新型コロナウイルス・オミクロン株への懸念が後退している他、株価の上昇が支援材料なり上昇が続いている。米国株の動向に注意したい。なおOPECプラスは年明け1月4日火曜日に会合を開催する。2月の増産量の行方に注目が集まっている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。