目次
ダイジェスト
・大豆(アメリカ)
2021/2022年シーズンでは供給面は据え置き、需要面では輸出需要が0.25億ブッシェル引き上げられた21.40億ブッシェル、それに伴い需要全体が0.25億ブッシェル上方修正された44.62億ブッシェルに、期末在庫が0.25億ブッシェル引き下げられた2.35億ブッシェル
2022/2023年シーズンの期末在庫予想の公開が始まる
・コーン(アメリカ)
2021/2022年シーズンは供給面・需要面ともに据え置き、コーンの平均価格が1ブッシェル当たり10セントの引き上げ
2022/2023年シーズンの期末在庫予想の公開が始まる
・世界需給
大豆はブラジル産が1億2500万トンで据え置き、アルゼンチン産は4200万トンで150万トンの引き下げ
中国向け需要は1億870万トンで据え置き
コーンはブラジル産が1億1600万トンで据え置き、アルゼンチン産は5300万トンで据え置き
中国向け需要は2億9100万トンで据え置き
・2022/2023年年シーズンの予想の発表が始まる
ウクライナ産コーンの予想生産量はロシアの侵攻のため前シーズンより2260万トン引き下げられた1900万トンと半減以下に
・ブラジルのConabは同日の12日に5月の穀物報告を発表、大豆の予想生産量は1億3830万トンで約1400万トンの引き上げ、コーンの予想生産量は1億1620トンで約60万トンの引き上げとなった。これらはUSDAの予想を上回る
・アルゼンチンのブエノス・アイレス穀物取引所の予想する大豆の生産量は4200万トン、コーンの生産量は4900万トン
総評
USDAは日本時間5月12日25時に5月の穀物の需給報告を発表した。今回の報告から2022/2023年シーズンの需給予想の公開が始まっている。大豆の2021/2022年シーズンの期末在庫が0.25億ブッシェル、コーンの2021/2022年シーズンの期末在庫は据え置きとなった。発表後には小麦相場の上昇と輸出需要の増加期待を材料に大豆相場は上昇したが植物油市場が下落に転じたことで頭が重かった。コーン相場は小麦相場の上昇が支援材料となった。
需給-大豆-
表1が大豆の2021/2022年シーズン(新穀)と2022/2023年シーズン(予想)の需給見通しとなる。
2021/2022年 シーズン (新穀) 見通し (4月時点) | 2021/2022年 シーズン (新穀) 見通し (5月時点) | 2022/2023年 シーズン (作付中) 見通し (5月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 8720 | 8720 | 9100 |
収穫面積(万エーカー) | 8630 | 8630 | 9010 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 51.40 | 51.40 | 51.50 |
期初在庫(億ブッシェル) | 2.57 | 2.57 | 2.35 |
生産量(億ブッシェル) | 44.35 | 44.35 | 46.40 |
輸入(億ブッシェル) | 0.15 | 0.15 | 0.15 |
供給合計(億ブッシェル) | 47.07 | 47.07 | 48.90 |
消費合計(億ブッシェル) | 44.47 | 44.72 | 45.80 |
内圧砕(油)(億ブッシェル) | 22.15 | 22.15 | 22.00 |
内輸出(億ブッシェル) | 21.15 | 21.40 | 22.00 |
期末在庫(億ブッシェル) | 2.60 | 2.35 | 3.10 |
平均価格(セント/ブッシェル) | 1325 | 1325 | 1440 |
*2021/2022年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は推定値
*2022/2023年はすべて推定値
今月の報告での大きな変化は以下の通り。
2021/2022年シーズンでは供給面は全て据え置き、需要面は輸出需要が0.25億ブッシェル引き上げられた21.40億ブッシェルとなり、需要全体も0.25億ブッシェル上方修正されて44.72億ブッシェルとなった。修正に伴い期末在庫が0.25億ブッシェル引き下げられた2.35億ブッシェルとなった。また、予想価格は据え置きだった。
2022/2023年シーズンは今回から公開が始まった。未だ作付中であり全て推定値となる。作付面積と収穫面積は3月末の作付意向面積の数値となっている。作付面積の増加に伴い大豆の供給が増加し、期末在庫も2021/2022年シーズン比で増加を見込んでいる。
需給-コーン-
表2はコーンの2021/2022年シーズン(新穀)、2022/2023年シーズン(予想)の需給見通しをそれぞれ前月の報告と比較している。
2021/2022年 シーズン (新穀) 見通し (4月時点) | 2021/2022年 シーズン (新穀) 見通し (5月時点) | 2022/2023年 シーズン (作付中) 見通し (5月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 9340 | 9340 | 8950 |
収穫面積(万エーカー) | 8540 | 8540 | 8170 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 177.0 | 177.0 | 177.0 |
期初在庫(億ブッシェル) | 12.35 | 12.35 | 14.40 |
生産量(億ブッシェル) | 151.15 | 151.15 | 144.60 |
輸入(億ブッシェル) | 0.02 | 0.02 | 0.02 |
供給合計(億ブッシェル) | 163.75 | 163.75 | 159.25 |
消費合計(億ブッシェル) | 149.35 | 149.35 | 145.65 |
内飼料用(億ブッシェル) | 56.25 | 56.25 | 53.50 |
内工業・種子・食品用(億ブッシェル) | 68.10 | 68.10 | 68.15 |
内エタノール用(億ブッシェル) | 53.75 | 53.75 | 53.75 |
内輸出(億ブッシェル) | 25.00 | 25.00 | 24.00 |
期末在庫(億ブッシェル) | 14.40 | 14.40 | 14.56 |
平均価格(セント/ブッシェル) | 580 | 590 | 675 |
*2021/2022年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は推定値
*2022/2023年はすべて推定値
今月の報告での変化は以下の通り。
2021/2022年シーズン共に供給側・需要側の全ての項目で据え置かれた。コーンの予想価格は10セント引き上げられた1ブッシェル590セントなっている。
2022/2023年シーズンは今回から公開が始まった。未だ作付中であり全て推定値となる。作付面積と収穫面積は3月末の作付意向面積の数値となっている。作付意向での作付面積の減少に応じて供給量が減少している。一方で需要も引き下げられており、期末在庫は2021/2022年シーズン比で微増を見込んでいる。
大豆
供給側(表3)で2021/2022年シーズン(新穀)の世界の予想生産量は前月の3億5072万トンから約140万トン引き下げられた3億4937万トンとなった。主要国生産国ではアメリカ産が1億2071万トンで据え置き、南米ではアルゼンチン産が4200万トンで150万トンの引き下げ、パラグアイ産が420万トンで据え置き、ブラジル産が1億2500万トンで据え置きとなった。
2022/2023年シーズンではアメリカが約600万トン増産して約1億2600万トン、南米では平年並みの天候を仮定しアルゼンチンが900万トン、ブラジルが1億4900万トン、パラグアイが1000万トンの収穫を見込んでいる。
大豆 | 2021/2022年シーズン 予想生産量(4月) 単位:重量トン | 2021/2022年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン | 2022/2023年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン |
全世界 | 3億5072万 | 3億4937万 | 3億9469万 |
アメリカ | 1億2071万 | 1億2071万 | 1億2628万 |
アルゼンチン | 4350万 | 4200万 | 5100万 |
パラグアイ | 420万 | 420万 | 1000万 |
ブラジル | 1億2500万 | 1億2500万 | 1億4900万 |
*アメリカの2021/2022年シーズンの生産量は確定値
需要側(表4)では世界全体の消費量が前月の3億6188万トンから約110万トン引き下げられた3億6293万トンとなった。主要輸入国では中国の需要が1億0870万トン、欧州需要が1742万トン、東南アジア需要が1024万トンでそれぞれ据え置きだった。2022/2023年シーズンでは世界各地での大豆需要の増加で約1500万トンの需要増加を見込んでいる。
大豆 | 2021/2022年シーズン 予想生産量(4月) 単位:重量トン | 2021/2022年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン | 2022/2023年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン |
全世界 | 3億6188万 | 3億6293万 | 3億7744万 |
中国 | 1億870万 | 1億872万 | 1億1559万 |
EU | 1742万 | 1762万 | 1793万 |
東南アジア | 1024万 | 1024万 | 1042万 |
コーン
2021/2022年シーズン(新穀)の世界の予想生産量は前月の12億1045万トンから約510万トン引き上げられた12億1562万トンとなった。主要生産国ではアメリカ産は3億8394万トンで据え置き、アルゼンチン産も5300万トンで据え置き、ブラジル産が1億1600万トンで据え置き、南アフリカ産が1630万トンで据え置き、ロシア産も1523万トンで据え置き、ウクライナ産は20万トン引き上げられた4210万トンだった。
2022/2023年シーズンではアメリカが約1600万トン引き下げられた3億6730万トン。ロシアの進行を受けているウクライナが2260万トン少ない1950万トンを見込んでいる。南米や他地域では平年並みの天候を仮定している。
コーン | 2021/2022年シーズン 予想生産量(4月) 単位:重量トン | 2021/2022年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン | 2022/2023年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン |
全世界 | 12億1045万トン | 12億1562万 | 11億8072万 |
アメリカ | 3億8394万トン | 3億8394万 | 3億6730万 |
アルゼンチン | 5300万トン | 5300万 | 5500万 |
ブラジル | 1億1600万トン | 1億1600万 | 1億2600万 |
南アフリカ | 1630万 | 1630万 | 1730万 |
ロシア | 1523万 | 1523万 | 1550万 |
ウクライナ | 4190万 | 4213万 | 1950万 |
世界の予想需要は前月の11億9715万トンから約230万トン引き上げられた11億9940万トンとなった。主要輸入国のうちエジプトが1640万トンで20万トンの引き上げ、欧州が8050万トンで70万トンの引き上げ、日本は1545万トンで20万トンの引き下げ、メキシコは4440万トンで20万トンの引き上げ、韓国は1175万トンで据え置きだった。最大の消費地である中国の需要は2億9100万トンで据え置きとなった。
2022/2023年シーズンでは中国の需要は増加するが、EUや他地域の需要減により世界需要が約1500万トン落ち込むと予想している。
コーン | 2021/2022年シーズン 予想生産量(4月) 単位:重量トン | 2021/2022年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン | 2022/2023年シーズン 予想生産量(5月) 単位:重量トン |
全世界 | 11億9715万 | 11億9940万 | 11億8497万 |
エジプト | 1620万 | 1640万 | 1640万 |
EU | 7980万 | 8050万 | 7860万 |
日本 | 1565万 | 1545万 | 1520万 |
メキシコ | 4420万 | 4440万 | 4470万 |
韓国 | 1175万 | 1175万 | 1155万 |
中国 | 2億9100万 | 2億9100万 | 2億9500万 |
*アメリカの2021/2022年シーズンの生産量は確定値
今後の見通し
5月のUSDAの需給報告ではアメリカ産大豆の輸出需要が2カ月連続で引き上げられた他は大きな変更はなかった。世界需給ではアルゼンチン産大豆の生産量が150万トンの引き下げとなった。
アメリカでは大豆・コーン共に2021/2022年シーズンの供給面は据え置きだった。需要面では2022/2023年シーズンの大豆の輸出需要が0.25億ブッシェル引き上げられた21.40億ブッシェルとなり、需要全体も同量の引き上げだった。これに伴い期末在庫が0.25億ブッシェル引き下げられた2.35億ブッシェルとなった。一方、コーンは2021/2022年シーズンの需要面・供給面とも全て据え置かれた。現在作付中の2022/2023年シーズンの予想の公開が始まっている。アメリカでは作付のシフトにより大豆の増産とコーンの減産を予想している。
世界需給では大豆の2021/2022年シーズンのアルゼンチン産の予想生産量が150万トンの引き下げとなる4200万トンとなった以外は大きな変動はなかった。世界全体では大豆の供給が140万トン引き上げ、需要が110万トンの引き下げだった。一方、コーンでは主要生産地の大きな変化はなかったが、その他の地域の増産で供給量が510万トンの引き上げ、需要は230万トンの引き上げとなった。来るべき2022/2023年シーズンのアメリカ以外では南米は平年作を予想し、大豆・コーンともに予想生産量が前シーズン比で引き上げられた。この他、ロシアのウクライナ侵攻によりウクライナ産コーンの生産は半分以下となる1900万トンまで落ち込む見通し。需要面では前シーズン比で大豆が1500万トンの需要増となる3億7744万トン、コーンが1500万トンの需要減となる11億8072万トンを見込む。
今回の需給報告では新型コロナウイルスの流行によるロックダウンの中国への影響は見込まれなかった。一方で、状況の悪化が現地から伝えられているブラジル産、アルゼンチン産コーンへの干ばつの反映が行われなかった(ブラジルのConabも生産量予想を引き上げるなど楽観的な結果)。大豆・コーン市場ではアメリカの天候変化と農作業状況が次第に支配的になっていくが、7月にブラジル産のサフリナコーンの収穫が終わるまではブラジルの状況に注意したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。