目次
ダイジェスト
・原油在庫は339万バレル減少。要因は輸入量の増加と戦略備蓄の放出量の増加
原油生産量は日量1190万バレルで前週から10万バレルの増加
輸出入では輸入量が656万バレル、輸出量が352万バレル。輸入量と輸出量はともに増加で304万バレルの輸入超過
製油所稼働率は91.8%で前週比で1.8%上昇、原油処理量は23万バレルの増加
Adjustmentによる在庫調整は減少側に転じ調整量は21万バレル
・ガソリン在庫は477万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)で在庫減少が続く
ガソリン生産量は14万バレル減少、輸入量は18万バレル増加
ガソリン出荷量は32万バレル増加、輸出量は1万バレル増加
・留出油在庫は123万バレル増加
(生産量+輸入量)>(出荷量+輸出量)で在庫増加に転じる
留出油の生産量はほぼ横ばい、輸入量は1万バレル減少
留出油の出荷量は4万バレル増加、輸出量は35万バレルの大幅減少
・原油と石油製品を合わせた在庫量は16億9140万バレルで前週より790万バレルの減少
・オクラホマ州クッシング在庫は240万バレル減少した2580万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は33.9%
・石油製品の出荷量は43万バレル増加した日量1966万バレルとなり、好調さの目安である日量2000万バレルを8週連続で下回る
・燃料卸売価格の発表ではガソリンが約13セントの上昇、ディーゼル燃料が57セントの大幅上昇、小売価格ではガソリン価格が約17セントの上昇、ディーゼル燃料は約1セントの下落
・欧州は段階的なロシア産原油の禁輸を検討しているが加盟国の反対で進まず
EIA週間統計の総評
日本時間5月18日23時半にEIAから週間在庫統計が発表された。原油在庫は339万バレルの減少だった。製油所の稼働率は前週比で1.8%上昇した91.8%、原油消費量は前週比で23万バレル増加した1593万バレルとなった。前日の原油相場はアメリカ経済の先行き懸念から株価が大幅下落したことで、原油需要の減少懸念が高まり下落した。石油製品ではガソリン在庫が477万バレルの減少、留出油在庫は123万バレルの増加となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は240万バレル減少した2580万バレルとなった。在庫減少の発表は一時的に支援材料となり原油相場の下落が一服する場面もあったが、大きな影響はなかった。最新データによると米国の戦略備蓄は5億3800万バレル。
原油生産は日量1190万バレルと前週から10万バレルの増加、原油輸入量は前週比で29万バレル増加した日量656万バレル、輸出量は日量64万バレル増加した日量352万バレルとなり輸出入全体としては304万バレルの輸入超過となっている。ガソリン高に対応するため戦略備蓄(SPR)が日量71万バレル放出されている。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は16億9140万バレルと前週比で790万バレルの減少となった。
原油と石油製品の在庫(表1)
表1は過去4週間分の結果を示している。原油の在庫は339万バレル減少した4億2080万バレル、ガソリン在庫は477万バレル減少した2億2020万バレル、留出油在庫が123万バレル増加した1億530万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は240万バレル減少した2580万バレルだった。今週はAPIとEIAが極めて近い在庫情報を発表している。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 240減 | 339減 | 848増 | 130増 | 69増 |
ガソリン(万バレル) | 510減 | 477減 | 360減 | 223減 | 157減 |
留出油(万バレル) | 110増 | 123増 | 91減 | 234減 | 144減 |
クッシング在庫(万バレル) | 240減 | 58減 | 137増 | 129増 |
*千バレル以下は切り捨て
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。原油在庫と留出油在庫は過去5年間の在庫レンジの下限以下、ガソリン在庫は減少傾向で在庫レンジのほぼ下限となっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と表3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は日量1190万バレルと前週から10万バレルの増加。原油輸入量は前週比で29万バレル増加した日量656万バレル、輸出量は前週比で64万バレル増加した352万バレルで304万バレルの輸入超過となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)の辻褄を合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計のAdjustmentは先週から93万バレル減少した21万バレルが在庫を減少させる形で加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1190 | 1180 | 1190 | 1190 | 1187 | 1100 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -71 | -99 | -44 | -41 | -64 | -27 |
原油輸入(万バレル/日) | 656 | 626 | 633 | 593 | 627 | 641 |
原油輸出(万バレル/日) | 352 | 287 | 357 | 372 | 342 | 330 |
Adjustment(万バレル/日) | -21 | 71 | 55 | 125 | 57 | 92 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している。千バレル以下は切り捨て
アメリカの原油輸入国上位10か国の国別内訳と前週からの輸入量の増減は表3の通り。今週はカナダ、メキシコ、サウジ・アラビア、コロンビア、ブラジルからの輸入が増加した。一方で、イラク、エクアドル、ナイジェリア、トリニダード・トバゴからの輸入量が増加した。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 358 | 328 | +30 |
メキシコ | 83 | 69 | +14 |
サウジ・アラビア | 42 | 30 | +12 |
コロンビア | 36 | 27 | +9 |
イラク | 24 | 32 | -8 |
エクアドル | 4 | 35 | -31 |
ブラジル | 26 | 14 | +12 |
ロシア | 0 | 0 | +-0 |
ナイジェリア | 12 | 13 | -1 |
トリニダード・トバゴ | 0 | 12 | -12 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所稼働率は前週から1.8%上昇した91.8%となり、製油所への原油投入量は前週比で23万バレル増加した日量1593万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産は前週から14万バレル減少した日量957万バレル、ジェット燃料生産は前週から6万バレル増加した日量178万バレル、留出油生産は前週からほぼ横ばいの日量488万バレルだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1593 | 1569 | 1546 | 1568 | 1569 | 1511 |
製油所稼働率(%) | 91.8 | 90.0 | 88.4 | 90.3 | 90.1 | 86.3 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 957 | 971 | 968 | 951 | 962 | 975 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 87 | 69 | 112 | 84 | 88 | 108 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 178 | 172 | 158 | 168 | 169 | 126 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 7 | 14 | 21 | 13 | 14 | 17 |
留出油生産(万バレル/日) | 488 | 488 | 471 | 478 | 481 | 455 |
留出油輸入(万バレル/日) | 11 | 12 | 9 | 12 | 11 | 26 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。ガソリン出荷量は前週から32万バレル増加した日量902万バレル、ジェット燃料の出荷量は前週から18万バレル増加した日量162万バレル、留出油の出荷量は前週から4万バレル増加した日量381万バレルだった。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 902 | 870 | 885 | 873 | 883 | 922 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 95 | 94 | 83 | 95 | 92 | 83 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 162 | 144 | 144 | 159 | 152 | 118 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 22 | 12 | 30 | 16 | 20 | 14 |
留出油出荷(万バレル/日) | 381 | 377 | 395 | 383 | 384 | 405 |
留出油輸出(万バレル/日) | 100 | 135 | 118 | 128 | 120 | 109 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品需給(日量)
原油の需要面では製油所稼働率が前週から1.8%上昇した91.8%となり、原油消費量は前週より23万バレル増加した日量1593万バレルだった。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で14万バレル減少した日量957万バレル、輸入量は18万バレル増加した日量87万バレルだった。ガソリンの出荷量は前週比で32万バレル増加した日量902万バレル、輸出量は前週から1万バレル増加した日量95万バレルだった。ガソリン在庫は生産量の減少と出荷量の増加の影響で477万バレル減と在庫減少幅が拡大している。
留出油は生産量が前週からほぼ横ばいの日量488万バレル、輸入量は前週から1万バレル減少した日量11万バレルだった。留出油の出荷量は前週から4万バレル増加した日量381万バレル、輸出量は前週から35万バレル減少した日量100万バレルとなった。輸出量の減少の影響で在庫増加に転じて在庫量は123万バレルの増加だった。
ジェット燃料生産量は前週から6万バレル増加した178万バレル、出荷量は前週から18万バレル増加した162万バレルだった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で43万バレル増加した日量1966万バレルとなったが、石油製品消費の好調さの目安の一つとなる日量2000万バレルを8週連続で下回った。今週は原油在庫が339万バレル減、ガソリン在庫が477万バレルの減少、留出油在庫が123万バレルの増加となった。ガソリンや留出油だけでなく、灯油や重油、エタノールなど全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で790万バレル減少した16億9140万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品のスポット卸売価格となる。ガソリン卸売価格は約13セントの上昇、ディーゼル燃料の卸売価格は約57セントの上昇だった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 5/13 | 5/6 | 4/29 | 4/22 | 4/15 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.988 | 3.850 | 3.433 | 3.067 | – | 2.151 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 5.339 | 4.768 | 4.624 | 4.101 | – | 2.045 |
原油 (ドル/バレル) | 110.52 | 109.72 | 104.59 | 102.86 | – | 65.32 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果となる。ガソリン小売価格は前週から約17セントの上昇、ディーゼル燃料の小売価格は約1セントの下落だった。
小売価格 | 5/16 | 5/9 | 5/2 | 4/25 | 4/18 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.491 | 4.328 | 4.182 | 4.107 | 4.066 | 3.028 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.941 | 4.779 | 4.657 | 4.587 | 4.557 | 3.440 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.240 | 5.070 | 4.939 | 4.869 | 4.831 | 3.688 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 5.613 | 5.623 | 5.509 | 5.160 | 5.101 | 3.249 |
今後の見通し
アメリカの原油生産量は前週から10万バレル増加した日量1190万バレルだった。需要面では製油所稼働率が前週から1.8%上昇した91.8%となり、原油消費量は23万バレル増加した日量1593万バレルとなった。原油輸入量は前週比で日量29万バレル増加した日量656万バレル、輸出量が64万バレル増加した日量352万バレルとなり、304万バレルの輸入超過となっている。原油輸出量の増加と戦略備蓄の放出量の減少で原油在庫は339万バレルの減少となった。
ガソリンは生産量が14万バレルの減少、ガソリン輸入量は43万バレルの大幅減少となった。一方で、ガソリン出荷量は15万バレルの減少、ガソリン輸出量は18万バレルの増加となった。ガソリン在庫は477万バレル減と減少幅が拡大した。留出油は生産量がほぼ横ばい、輸入量は1万バレルの減少となった。一方で出荷量は4万バレルの増加、輸出量が35万バレルの大幅減少となった。輸出量の大幅減少で留出油在庫は123万バレル増加と在庫増に転じた。燃料小売価格はガソリン価格が前週から1ガロン当たり約17セントの上昇、ディーゼル燃料は約1セントの下落と上昇が一服した。
全ての石油製品の出荷量は日量43万バレル増加した1966万バレルとなったが、石油製品消費の好調さの目安である日量2000万バレルを8週間連続で下回った。ガソリンやディーゼル燃料に加えてエタノールや液化プロパンなど全ての石油製品と原油を合わせた在庫は790万バレル減少した16億9140万バレルとなった。
今週の初めは中国上海のロックダウンが緩和され世界経済が回復、原油需要も増加するとの見方が広がり上昇していたが、水曜日にアメリカの小売企業の決算悪化を切っ掛けに株価が大幅下落したことを受けて原油相場も大きく下落している。直近の原油相場は大きな理由なく期待感から上昇していた可能性が高いので、同様に大きな理由なく下落の可能性がある。きっかけとなりうるヘッドラインニュースや株価の値動きなどに注意を払いたい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。