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レポート
column

2022/05/25

レポート:アメリカの石油輸出規制の可能性(2022年5月25日)


ダイジェスト

・ガソリン価格は記録的な高値へ
・アメリカ政府は戦略備蓄(SPR)の放出や従来よりエタノールを多く配合したガソリンの販売拡大を対策として実施
・燃料備蓄の緊急放出や燃料品質基準の引き下げも検討
・アメリカ国内の燃料価格引き下げのため原油や石油製品の輸出制限を検討と報道
・輸出規制にはアメリカ国内の石油産業が反対
・輸出規制は具体化していないが、11月の中間選挙対策で輸出規制が導入される可能性

概要

 アメリカのエネルギー省(DOE)のグランホルム長官は視察中の戦略備蓄関連施設で5月24日に行った会見においてアメリカ国内のガソリンなど燃料価格の上昇を緩和するため石油輸出制限を行う可能性があると発言した。この発言が即アメリカの原油や石油製品の輸出制限につながるとは考えにくいが、5月24日のWTIの原油相場は発言を受けて下落している。

アメリカのガソリン価格

図1 アメリカのガソリン価格(出展元 GasBuddy.com)

 図1はアメリカのレギュラーガソリン平均価格の過去18か月間の推移を示している。芯がコロナウイルスの影響で一時1ガロン当たり2ドル台を割り込むまで下落していたガソリン価格は2021年に入って持ち直し、1ガロン当たり概ね3ドルで推移していた。2022年2月末にロシアがウクライナへ進行するとガソリン価格は急上昇して昨日は1ガロン当たり4.60ドルと2008年のいわゆるリーマンショック前に記録した1ガロン当たり4.16ドルを上回り記録的な高値となっている。

アメリカの原油と石油製品の輸出

図2 アメリカの原油と石油製品の輸出収支(出展元 EIA)
*青:原油+石油製品、濃い赤:原油のみ、薄い赤:石油製品のみ

 図2はアメリカの原油とガソリンなど石油製品の1日当たり輸出収支を示しており、0を割り込んだ場合には輸出が輸入を上回る状態を意味している。原油と石油製品を加えた全体(青線)は2019年後半にマイナスとなっており、アメリカが石油の純輸出国となったことを意味している。内訳をみると、原油(濃い赤線)は未だ輸入超過の状態が続いており先週の時点で原油輸入量は日量約650万バレル、原油輸出量は日量約350万バレルとなっている。一方で石油製品(薄い赤線)は2010年頃から輸出超過の状態となり、更に超過幅が拡大している。これも先週の時点でガソリン輸入量は日量約90万バレル、輸出量が日量約90万バレル、留出油(ディーゼル燃料の元)の輸入量が日量約10万バレル、輸出量が日量約100万バレルとなっている。今回、話題に上った輸出制限政策は計画段階ですらないため詳細は全くの不明だが、原油やガソリンなど石油製品の輸出を止めることで国内の原油価格、ガソリン価格の引き下げを狙っていると考えられる。

その他の対策

 既に実施されている対策が、戦略備蓄原油の放出、従来より高い割合でガソリンより安いエタノールを混合したガソリンの販売の拡大となっている。これらに加えて、ディーゼル燃料備蓄の緊急放出やガソリンのスモッグ防止規制(ガソリンの品質基準の引き下げ)解除が検討されている。これらの政策は石油製品の禁輸と比べてより積極的に議論されており、実現可能性がより高いと報じられている。
 余談だが、DOEは3月に発表した戦略備蓄放出計画の一環として4010万バレルの原油の売却を昨日発表している。

今後の見通し

 バイデン政権はインフレ対策の一環として複数の燃料価格対策を実施を検討している。その中で原油や石油製品の輸出を制限する可能性が浮上している。ただし、国内の石油精製業者など石油産業の関係者は欧州がロシア産の原油・石油製品から脱却するためにアメリカ産を購入している中で輸出規制はこの動きに水を差すと反対している。
 一方で、ガソリンなど生活必需品の値上がりは11月に予定されている中間選挙での敗因に繋がりかねないため、実施中の対策で値段が抑制できなかった場合に輸出規制が入る可能性がある。仮に実施された場合、WTI原油相場やガソリン先物相場などの下落が予想される一方で、北海ブレント原油価格は上昇することが予想される。ガソリン価格やバイデン政権のインフレ対策などの続報に注意したい。
 


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。

 

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