目次
ダイジェスト
・原油在庫は195万バレル増加。
原油生産量は日量1200万バレルで前週から10万バレルの増加
輸出入では輸入量が698万バレル、輸出量が372万バレル。輸入量、輸出量ともに増加で326万バレルの輸入超過
製油所稼働率は93.7%で前週比で0.5%低下、原油処理量は6万バレルの減少
Adjustmentによる在庫調整は増加側で調整量は23万バレル
・ガソリン在庫は71万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)で在庫減少が続く
ガソリン生産量は2万バレル減少、輸入量は52万バレルの大幅減少
ガソリン出荷量は10万バレル減少、輸出量は3万バレル減少
・留出油在庫は72万バレル増加
(生産量+輸入量)>(出荷量+輸出量)で在庫増加
留出油の生産量は6万バレル減少、輸入量は7万バレル減少
留出油の出荷量は3万バレル減少、輸出量は17万バレル増加
・原油と石油製品を合わせた在庫量は16億8220万バレルで前週より280万バレルの減少
・オクラホマ州クッシング在庫は82万バレル減少した2260万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は29.7%
・石油製品の出荷量は52万バレル減少した日量1970万バレルとなり、好調さの目安である日量2000万バレルを再度下回る
・燃料卸売価格の発表ではガソリンは約30セントの大幅下落、ディーゼル燃料は約2セントの上昇、小売価格ではガソリン価格が約13セントの上昇、ディーゼル燃料は約1セントの上昇
・ガソリン小売価格が1ガロン5ドルを突破
EIA週間統計の総評
日本時間6月15日23時半にEIAから週間在庫統計が発表された。原油在庫は195万バレルの増加だった。製油所の稼働率は前週比で0.5%低下した93.7%、原油消費量は前週比で6万バレル減少した1632万バレルだった。前日の原油相場はアメリカの大幅利上げ懸念を材料に下落したが利上げ発表後に株価が上昇すると買い戻された。石油製品ではガソリン在庫が71万バレルの減少、留出油在庫は72万バレルの増加となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は82万バレル減少した2260万バレルとなった。最新データによると米国の戦略備蓄は5億1160万バレルだった。
原油生産は日量1200万バレルと前週から10万バレルの増加、原油輸入量は前週比で83万バレル増加した日量698万バレル、輸出量は日量149万バレル増加した日量372万バレルとなり輸出入全体としては326万バレルの輸入超過となっている。ガソリン高に対応するため戦略備蓄(SPR)が日量110万バレル放出されている。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は16億8220万バレルと前週比で280万バレルの減少となった。
原油と石油製品の在庫(表1)
表1は過去4週間分の結果を示している。原油の在庫は195万バレル増加した4億1870万バレル、ガソリン在庫は71万バレル減少した2億1750万バレル、留出油在庫が72万バレル増加した1億970万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は82万バレル減少した2260万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 70増 | 195増 | 202減 | 506減 | 101減 |
ガソリン(万バレル) | 220減 | 71減 | 81減 | 71減 | 48減 |
留出油(万バレル) | 20増 | 72増 | 259増 | 52減 | 165増 |
クッシング在庫(万バレル) | 82減 | 159減 | 25増 | 106減 |
*千バレル以下は切り捨て
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。原油在庫とガソリン在庫、留出油在庫と過去5年間の在庫レンジの下限以下となっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と表3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は日量1200万バレルと前週から10万バレルの増加。原油輸入量は前週比で83万バレル増加した日量698万バレル、輸出量は前週比で149万バレル増加した372万バレルで326万バレルの輸入超過となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)の辻褄を合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計のAdjustmentは先週から42万バレル増加した23万バレルが在庫を増加させる形で加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1200 | 1190 | 1190 | 1190 | 1192 | 1120 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -110 | -103 | -77 | -85 | -92 | -12 |
原油輸入(万バレル/日) | 698 | 615 | 621 | 648 | 674 | 674 |
原油輸出(万バレル/日) | 372 | 223 | 399 | 434 | 388 | 388 |
Adjustment(万バレル/日) | 23 | -18 | 40 | 122 | 42 | 109 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している。千バレル以下は切り捨て
アメリカの原油輸入国上位10か国の国別内訳と前週からの輸入量の増減は表3の通り。今週はサウジ・アラビア、コロンビア、イラク、ブラジルからの輸入が増加した。一方で、カナダ、メキシコ、エクアドル、ナイジェリアからの輸入量が減少した。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 339 | 360 | -20 |
メキシコ | 60 | 71 | -11 |
サウジ・アラビア | 68 | 34 | +34 |
コロンビア | 29 | 14 | +15 |
イラク | 55 | 19 | +36 |
エクアドル | 22 | 25 | -3 |
ブラジル | 20 | 4 | +16 |
ロシア | 0 | 0 | +-0 |
ナイジェリア | 18 | 19 | -1 |
トリニダード・トバゴ | 0 | 0 | +-0 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所稼働率は前週から0.5%上昇した93.7%となり、製油所への原油投入量は前週比で6万バレル減少した日量1632万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産が前週から2万バレル減少した日量1002万バレル、ジェット燃料生産は前週から10万バレル増加した日量173万バレル、留出油生産は前週から5万バレル減少した日量494万バレルだった。
製油所稼働率等今週 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1632 | 1638 | 1603 | 1626 | 1625 | 1633 |
製油所稼働率(%) | 93.7 | 94.2 | 92.6 | 93.2 | 93.4 | 92.6 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1002 | 1004 | 996 | 942 | 986 | 992 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 65 | 117 | 89 | 84 | 89 | 105 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 173 | 162 | 171 | 171 | 169 | 137 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 7 | 20 | 25 | 8 | 13 | 14 |
留出油生産(万バレル/日) | 494 | 500 | 498 | 514 | 501 | 505 |
留出油輸入(万バレル/日) | 15 | 22 | 26 | 8 | 18 | 37 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。ガソリン出荷量は前週から10万バレル減少した日量909万バレル、ジェット燃料の出荷量は前週から0.5万バレル減少した日量151万バレル、留出油の出荷量は前週から3万バレル減少した日量361万バレルだった。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 909 | 919 | 897 | 879 | 901 | 872 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 92 | 95 | 106 | 77 | 93 | 83 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 151 | 152 | 171 | 153 | 157 | 150 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 16 | 21 | 17 | 15 | 18 | 7 |
留出油出荷(万バレル/日) | 361 | 365 | 396 | 386 | 377 | 404 |
留出油輸出(万バレル/日) | 137 | 120 | 135 | 112 | 126 | 123 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品需給(日量)
原油の需要面では製油所稼働率が前週から0.5%低下した93.7%となり、原油消費量は前週より6万バレル減少した日量1632万バレルだった。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で2万バレル減少した日量1002万バレル、輸入量は52万バレル減少した日量65万バレルだった。ガソリンの出荷量は前週比で10万バレル減少した日量909万バレル、輸出量は前週から3万バレル減少した日量92万バレルだった。ガソリン在庫は71万バレル減と在庫減少幅が縮小している。
留出油は生産量が前週から6万バレル減少した日量494万バレル、輸入量は前週から7万バレル減少した日量15万バレルだった。留出油の出荷量は前週から3万バレル減少した日量361万バレル、輸出量は前週から17万バレル増加した日量137万バレルとなった。輸出量の増加の影響で在庫増加幅が縮小して72万バレルの在庫増加だった。
ジェット燃料生産量は前週から11万バレル増加した173万バレル、出荷量は前週から0.5万バレル減少した151万バレルだった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で52万バレル減少した日量1970万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安の一つとなる日量2000万バレルを再度下回った。今週は原油在庫が195万バレル増加、ガソリン在庫が71万バレルの減少、留出油在庫が72万バレルの増加となった。ガソリンや留出油だけでなく、灯油や重油、エタノールなど全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で280万バレル減少した16億8220万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品のスポット卸売価格となる。ガソリン卸売価格は約30セントの大幅下落、ディーゼル燃料の卸売価格は約2セントの上昇、原油価格は1.76ドルの上昇だった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 6/10 | 6/3 | 5/27 | 5/20 | 5/13 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.205 | 4.509 | 4.102 | 3.918 | 3.988 | 2.143 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 4.445 | 4.422 | 4.022 | 4.004 | 5.339 | 2.120 |
原油 (ドル/バレル) | 120.73 | 118.97 | 114.96 | 112.63 | 110.52 | 71.00 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果となる。ガソリン小売価格は前週から約13セントの大幅上昇、ディーゼル燃料の小売価格は約1セントの上昇だった。
小売価格 | 6/13 | 6/6 | 5/30 | 5/23 | 5/16 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.006 | 4.876 | 4.624 | 4.593 | 4.491 | 3.069 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.455 | 5.320 | 5.083 | 5.040 | 4.941 | 3.488 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.762 | 5.635 | 5.399 | 5.346 | 5.240 | 3.744 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 5.718 | 5.703 | 5.539 | 5.571 | 5.613 | 3.286 |
今後の見通し
アメリカの原油生産量は前週から10万バレル増加した日量1200万バレルだった。需要面では製油所稼働率が前週から0.5%低下した93.7%となり、原油消費量は6万バレル減少した日量1632万バレルとなった。原油輸入量は前週比で日量83万バレル増加した日量698万バレル、輸出量が149万バレル増加した日量372万バレルとなり、326万バレルの輸入超過となっている。原油生産量と輸入量の増加、原油消費量が減少したことで原油在庫は195万バレルの増加となった。
ガソリンは生産量が2万バレルの減少、ガソリン輸入量は52万バレルの大幅減少となった。一方で、ガソリン出荷量は10万バレルの減少、ガソリン輸出量は3万バレルの減少となった。ガソリン在庫は71万バレル減とやや減少幅が縮小した。留出油は生産量が6万バレルの減少、輸入量は7万バレルの減少となった。一方で出荷量は3万バレルの減少、輸出量が17万バレルの増加となった。輸出量の増加で留出油在庫は72万バレル増加と在庫増加幅が縮小した。燃料小売価格はガソリン価格が前週から1ガロン当たり約13セントの大幅上昇、ディーゼル燃料も約1セントの小幅上昇となった。
全ての石油製品の出荷量は日量52万バレル減少した1970万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安である日量2000万バレルを再度割り込んだ。ガソリンやディーゼル燃料に加えてエタノールや液化プロパンなど全ての石油製品と原油を合わせた在庫は280万バレル減少した16億8220万バレルとなった。
今週の原油相場はアメリカの原油需要の増加期待が支援材料となったが、新型コロナウイルス対策で上海のロックダウンが再度強化されたことで中国の原油需要の不透明感やバイデン米大統領が来月にサウジ・アラビアを訪問し原油高について会談するとの発表、開催中のFOMCでの大幅利上げ懸念を材料に売られている。この他、株価の値動きやウクライナ情勢などに注意したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。