目次
ダイジェスト
・原油在庫は202万バレル減少。
原油生産量は日量1190万バレルで前週から横ばい
輸出入では輸入量が615万バレル、輸出量が223万バレル。輸入量、輸出量ともに減少で392万バレルの輸入超過
製油所稼働率は94.2%で前週比で1.6%上昇、原油処理量は35万バレルの増加
Adjustmentによる在庫調整は減少側で調整量は18万バレル
・ガソリン在庫は81万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)で在庫減少が続く
ガソリン生産量は7万バレル増加、輸入量は28万バレル増加
ガソリン出荷量は22万バレル増加、輸出量は11万バレル減少
・留出油在庫は259万バレル増加
(生産量+輸入量)>(出荷量+輸出量)で在庫増加に転じる
留出油の生産量は2万バレル減少、輸入量は4万バレル減少
留出油の出荷量は31万バレル減少、輸出量は15万バレルの減少
・原油と石油製品を合わせた在庫量は16億8490万バレルで前週より370万バレルの増加
・オクラホマ州クッシング在庫は159万バレル減少した2340万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は30.8%
・石油製品の出荷量は71万バレル増加した日量2022万バレルとなり、好調さの目安である日量2000万バレルを11週ぶりに回復
・燃料卸売価格の発表ではガソリン、ディーゼル燃料ともに約40セントの大幅上昇、小売価格ではガソリン価格が約25~26セントの上昇、ディーゼル燃料は約17セントの上昇
EIA週間統計の総評
日本時間6月8日23時半にEIAから週間在庫統計が発表された。原油在庫は202万バレルの減少だった。製油所の稼働率は前週比で1.6%上昇した94.2%、原油消費量は前週比で35万バレル増加した1638万バレルだった。前日の原油相場はアメリカや中国の原油消費増加期待を材料に上昇した。石油製品ではガソリン在庫が81万バレルの減少、留出油在庫は259万バレルの増加となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は159万バレル減少した2340万バレルとなった。最新データによると米国の戦略備蓄は5億1930万バレルとなった。
原油生産は日量1190万バレルと前週から横ばい、原油輸入量は前週比で6万バレル減少した日量615万バレル、輸出量は日量175万バレル減少した日量223万バレルとなり輸出入全体としては392万バレルの輸入超過となっている。ガソリン高に対応するため戦略備蓄(SPR)が日量103万バレル放出されている。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は16億8490万バレルと前週比で370万バレルの増加となった。
原油と石油製品の在庫(表1)
表1は過去4週間分の結果を示している。原油の在庫は202万バレル減少した4億1680万バレル、ガソリン在庫は81万バレル減少した2億1820万バレル、留出油在庫が259万バレル増加した1億900万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は159万バレル減少した2340万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 180増 | 202減 | 506減 | 101減 | 339減 |
ガソリン(万バレル) | 180増 | 81減 | 71減 | 48減 | 477減 |
留出油(万バレル) | 340増 | 259増 | 52減 | 165増 | 123増 |
クッシング在庫(万バレル) | 159減 | 25増 | 106減 | 240減 |
*千バレル以下は切り捨て
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。原油在庫とガソリン在庫、留出油在庫と過去5年間の在庫レンジの下限以下となっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と表3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は日量1190万バレルと前週から横ばい。原油輸入量は前週比で6万バレル減少した日量615万バレル、輸出量は前週比で175万バレル減少した223万バレルで392万バレルの輸入超過となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)の辻褄を合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計のAdjustmentは先週から59万バレル減少した18万バレルが在庫を減少させる形で加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1190 | 1190 | 1190 | 1190 | 1190 | 1100 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -103 | -77 | -85 | -71 | -84 | -19 |
原油輸入(万バレル/日) | 615 | 621 | 648 | 656 | 635 | 663 |
原油輸出(万バレル/日) | 223 | 399 | 434 | 352 | 352 | 293 |
Adjustment(万バレル/日) | -18 | 40 | 122 | -21 | 30 | 27 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している。千バレル以下は切り捨て
アメリカの原油輸入国上位10か国の国別内訳と前週からの輸入量の増減は表3の通り。今週はカナダ、エクアドルからの輸入が増加した。一方で、メキシコ、コロンビア、イラク、ブラジル、トリニダード・トバゴからの輸入量が減少した。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 360 | 344 | +16 |
メキシコ | 71 | 74 | -3 |
サウジ・アラビア | 34 | 34 | +-0 |
コロンビア | 14 | 21 | -7 |
イラク | 19 | 32 | -13 |
エクアドル | 25 | 4 | +21 |
ブラジル | 4 | 17 | -13 |
ロシア | 0 | 0 | +-0 |
ナイジェリア | 19 | 19 | +-0 |
トリニダード・トバゴ | 0 | 7 | -7 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所稼働率は前週から1.6%上昇した94.2%となり、製油所への原油投入量は前週比で35万バレル増加した日量1638万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産が前週から7万バレル増加した日量1004万バレル、ジェット燃料生産は前週から9万バレル減少した日量162万バレル、留出油生産は前週から1万バレル増加した日量500万バレルだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1638 | 1603 | 1626 | 1593 | 1615 | 1592 |
製油所稼働率(%) | 94.2 | 92.6 | 93.2 | 91.8 | 93.0 | 91.3 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1004 | 996 | 942 | 957 | 975 | 943 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 117 | 89 | 84 | 87 | 94 | 105 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 162 | 171 | 171 | 178 | 170 | 128 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 20 | 25 | 8 | 7 | 15 | 6 |
留出油生産(万バレル/日) | 500 | 498 | 514 | 488 | 500 | 491 |
留出油輸入(万バレル/日) | 22 | 26 | 8 | 11 | 16 | 18 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。ガソリン出荷量は前週から22万バレル増加した日量919万バレル、ジェット燃料の出荷量は前週から19万バレル減少した日量152万バレル、留出油の出荷量は前週から31万バレル減少した日量365万バレルだった。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 919 | 897 | 879 | 902 | 870 | 848 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 95 | 106 | 77 | 95 | 93 | 95 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 152 | 171 | 153 | 162 | 150 | 103 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 21 | 17 | 15 | 22 | 19 | 8 |
留出油出荷(万バレル/日) | 365 | 396 | 386 | 381 | 406 | 341 |
留出油輸出(万バレル/日) | 120 | 135 | 112 | 100 | 117 | 106 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品需給(日量)
原油の需要面では製油所稼働率が前週から1.6%上昇した94.2%となり、原油消費量は前週より35万バレル増加した日量1638万バレルだった。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で7万バレル増加した日量1004万バレル、輸入量は28万バレル増加した日量117万バレルだった。ガソリンの出荷量は前週比で22万バレル増加した日量919万バレル、輸出量は前週から11万バレル減少した日量95万バレルだった。ガソリン在庫は81万バレル減と在庫減少幅が拡大している。
留出油は生産量が前週から2万バレル増加した日量500万バレル、輸入量は前週から4万バレル減少した日量22万バレルだった。留出油の出荷量は前週から31万バレル減少した日量365万バレル、輸出量は前週から15万バレル減少した日量120万バレルとなった。出荷量と輸出量の減少の影響で在庫が増加に転じて259万バレルの在庫増加となった。
ジェット燃料生産量は前週から9万バレル減少したの162万バレル、出荷量は前週から19万バレル減少した152万バレルだった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で71万バレル増加した日量2022万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安の一つとなる日量2000万バレルを11週ぶりに上回った。今週は原油在庫が202万バレル減少、ガソリン在庫が81万バレルの減少、留出油在庫が259万バレルの増加となった。ガソリンや留出油だけでなく、灯油や重油、エタノールなど全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で370万バレル増加した16億8490万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品のスポット卸売価格となる。ガソリン卸売価格は約40セントの大幅上昇、ディーゼル燃料の卸売価格も約40セントの大幅上昇、原油価格は4.01ドルの上昇だった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 6/3 | 5/27 | 5/20 | 5/13 | 5/6 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.509 | 4.102 | 3.918 | 3.988 | 3.850 | 2.164 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 4.422 | 4.022 | 4.004 | 5.339 | 4.768 | 2.116 |
原油 (ドル/バレル) | 118.97 | 114.96 | 112.63 | 110.52 | 109.72 | 69.57 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果となる。ガソリン小売価格は前週から約25~26セントの大幅上昇、ディーゼル燃料の小売価格は約17セントの上昇だった。
小売価格 | 6/6 | 5/30 | 5/23 | 5/16 | 5/9 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.876 | 4.624 | 4.593 | 4.491 | 4.328 | 3.035 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.320 | 5.083 | 5.040 | 4.941 | 4.779 | 3.463 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.635 | 5.399 | 5.346 | 5.240 | 5.070 | 3.712 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 5.703 | 5.539 | 5.571 | 5.613 | 5.623 | 3.274 |
今後の見通し
アメリカの原油生産量は前週から横ばいの日量1190万バレルだった。需要面では製油所稼働率が前週から1.6%上昇した94.2%となり、原油消費量は35万バレル増加した日量1638万バレルとなった。原油輸入量は前週比で日量6万バレル減少した日量615万バレル、輸出量が175万バレル減少した日223万バレルとなり、392万バレルの輸入超過となっている。原油の消費は増加しているが輸出量が減少したことで原油在庫は202万バレルの減少となった。
ガソリンは生産量が7万バレルの増加、ガソリン輸入量は28万バレルの増加となった。一方で、ガソリン出荷量は22万バレルの増加、ガソリン輸出量は11万バレルの減少となった。ガソリン在庫は81万バレル減と減少幅が拡大した。留出油は生産量が2万バレルの増加、輸入量は4万バレルの減少となった。一方で出荷量は31万バレルの減少、輸出量が15万バレルの減少となった。出荷量と輸出量の減少で留出油在庫は259万バレル増加と在庫増加に転じた。燃料小売価格はガソリン価格が前週から1ガロン当たり約25~26セントの大幅上昇、ディーゼル燃料も約17セントの大幅上昇となった。
全ての石油製品の出荷量は日量71万バレル増加した2022万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安である日量2000万バレルを11週間ぶりに上回った。ガソリンやディーゼル燃料に加えてエタノールや液化プロパンなど全ての石油製品と原油を合わせた在庫は370万バレル増加した16億8490万バレルとなった。
今週の原油相場はサウジ・アラビアのアジア・欧州向け原油販売価格の上昇やアメリカの株価の上昇と原油需要の増加期待、新型コロナウイルスのロックダウンが緩和した中国の原油需要増加期待を材料に上昇して120ドルを上回った。一方でOPECプラスの増産は期待外れのものとなっている。イランやベネズエラの市場復帰も不透明で供給増加の見通しはなく、原油相場の高止まりはしばらく続くと考えられる。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。