目次
ダイジェスト
・原油在庫は325万バレル増加。
原油生産量は日量1200万バレルで前週から10万バレルの減少
輸出入では輸入量が667万バレル、輸出量が302万バレルで365万バレルの輸入超過
製油所稼働率は94.9%で前週比で0.4%上昇、原油処理量は20万バレルの増加
Adjustmentによる在庫調整は増加側で調整量は47万バレル
・ガソリン在庫は582万バレル増加
(生産量+輸入量)>(出荷量+輸出量)で在庫増加に転じる
ガソリン生産量は142万バレルの大幅減少、輸入量は23万バレル減少
ガソリン出荷量は135万バレルの大幅減少、輸出量は17万バレル減少
・留出油在庫は266万バレル増加
(生産量+輸入量)>(出荷量+輸出量)で在庫増加に転じる
留出油の生産量は24万バレル減少、輸入量は3万バレル増加
留出油の出荷量は101万バレルの大幅減少、輸出量は24万バレル増加
・原油と石油製品を合わせた在庫量は16億9270万バレルで前週より1490万バレルの増加
・オクラホマ州クッシング在庫は31万バレル増加の2160万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は28.4%
・石油製品の出荷量は174万バレル減少した日量1872万バレルとなり、好調さの目安である日量2000万バレルを2週間ぶりに下回る
・燃料卸売価格の発表ではガソリンは約17セントの下落、ディーゼル燃料は約26セントの下落、ガソリン小売価格は12から13セントの下落、ディーゼル燃料の小売価格は約11セント下落
・中国が新型コロナウイルス対策(マカオのロックダウン、上海住民のウイルス検査など)を再強化
EIA週間統計の総評
日本時間7月13日23時半にEIAから週間在庫統計が発表された。原油在庫は325万バレルの増加だった。製油所の稼働率は前週比で0.4%上昇した94.9%、原油消費量は前週比で20万バレル増加した1664万バレルだった。石油製品ではガソリン在庫が582万バレルの増加、留出油在庫は266万バレルの増加となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は31万バレル増加した2160万バレルだった。前日の原油相場はCPIが予想以上に上昇しインフレが過熱していることで金融引き締め策が強化されるとの見方を材料に下落した。最新データによると米国の戦略備蓄の量は4億8510万バレルだった。
原油生産は日量1200万バレルと前週から10万バレルの減少、原油輸入量は前週比で16万バレル減少した日量667万バレル、輸出量は日量41万バレル増加した日量302万バレルとなり輸出入全体としては365万バレルの輸入超過となっている。ガソリン高に対応するため戦略備蓄(SPR)が日量98万バレル放出されている。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は16億9270万バレルと前週比で1490万バレルの増加となった。
原油と石油製品の在庫(表1)
表1は過去4週間分の結果を示している。原油の在庫は325万バレル増加した4億2710万バレル、ガソリン在庫は582万バレル増加した2億2490万バレル、留出油在庫が266万バレル増加した1億1380万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は31万バレル増加した2160万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 480増 | 325増 | 823増 | 276減 | 40減 |
ガソリン(万バレル) | 290増 | 582増 | 249減 | 264増 | 150増 |
留出油(万バレル) | 330増 | 266増 | 126減 | 255増 | 10増 |
クッシング在庫(万バレル) | 31増 | 7増 | 78減 | 60減 |
*千バレル以下は切り捨て
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)を比較している。原油在庫は過去5年間の在庫レンジの下限値付近、ガソリン在庫と留出油在庫は過去5年間の在庫レンジの下限以下となっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と表3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は日量1200万バレルと前週から10万バレルの減少。原油輸入量は前週比で16万バレル減少した日量667万バレル、輸出量は前週比で41万バレル増加した302万バレルで365万バレルの輸入超過となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)の辻褄を合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計のAdjustmentは先週から2万バレル増加した47万バレルが在庫を増加させる形で加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1200 | 1210 | 1210 | 1200 | 1205 | 1140 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -98 | -83 | -99 | -97 | -94 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 667 | 683 | 599 | 622 | 643 | 622 |
原油輸出(万バレル/日) | 302 | 261 | 338 | 357 | 314 | 402 |
Adjustment(万バレル/日) | 47 | 45 | 56 | 58 | 51 | 136 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している。千バレル以下は切り捨て
アメリカの原油輸入国上位10か国の国別内訳と前週からの輸入量の増減は表3の通り。今週はカナダ、サウジ・アラビア、ブラジルからの輸入が増加した。一方で、メキシコ、イラク、ナイジェリアからの輸入量が減少した。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 382 | 380 | +2 |
メキシコ | 61 | 70 | -9 |
サウジ・アラビア | 63 | 39 | +24 |
コロンビア | 21 | 21 | +-0 |
イラク | 30 | 36 | -6 |
エクアドル | 14 | 14 | +-0 |
ブラジル | 14 | 10 | +4 |
ロシア | 0 | 0 | +-0 |
ナイジェリア | 7 | 17 | -10 |
トリニダード・トバゴ | 0 | 0.3 | +-0 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所稼働率は前週から0.4%上昇した94.9%となり、製油所への原油投入量は前週比で20万バレル増加した日量1664万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産が前週から142万バレル減少した日量892万バレル、ジェット燃料生産は前週から4万バレル減少した日量161万バレル、留出油生産は前週から24万バレル減少した日量513万バレルだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1664 | 1643 | 1666 | 1626 | 1650 | 1609 |
製油所稼働率(%) | 94.9 | 94.5 | 95.0 | 94.0 | 94.6 | 91.8 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 892 | 1034 | 949 | 935 | 952 | 985 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 71 | 94 | 82 | 78 | 81 | 104 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 161 | 166 | 162 | 165 | 164 | 147 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 12 | 2 | 15 | 23 | 13 | 11 |
留出油生産(万バレル/日) | 513 | 537 | 513 | 505 | 517 | 492 |
留出油輸入(万バレル/日) | 13 | 10 | 9 | 9 | 10 | 7 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。ガソリン出荷量は前週から135万バレル減少した日量806万バレル、ジェット燃料の出荷量は前週から43万バレル減少した日量136万バレル、留出油の出荷量は前週から101万バレル減少した日量336万バレルだった。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 806 | 941 | 892 | 850 | 872 | 928 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 84 | 101 | 96 | 93 | 93 | 74 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 136 | 180 | 148 | 169 | 158 | 155 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 17 | 10 | 18 | 18 | 16 | 13 |
留出油出荷(万バレル/日) | 336 | 438 | 356 | 386 | 379 | 316 |
留出油輸出(万バレル/日) | 152 | 128 | 129 | 126 | 134 | 131 |
*千バレル以下は切り捨て
石油製品需給(日量)
原油の需要面では製油所稼働率が前週から0.4%上昇した94.9%となり、原油消費量は前週より20万バレル増加した日量1664万バレルだった。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で142万バレル減少した日量892万バレル、輸入量は23万バレル減少した日量71万バレルだった。ガソリンの出荷量は前週比で135万バレル減少した日量806万バレル、輸出量は前週から17万バレル減少した日量84万バレルだった。生産量と出荷量が大幅減少し、582万バレル増と在庫増加に転じた。
留出油は生産量が前週から24万バレル減少した日量513万バレル、輸入量は前週から3万バレル増加した日量13万バレルだった。留出油の出荷量は前週から101万バレル減少した日量336万バレル、輸出量は前週から24万バレル増加した日量152万バレルとなった。出荷量の大幅減少で266万バレルの在庫増加に転じた。
ジェット燃料生産量は前週から5万バレル減少した161万バレル、出荷量は前週から34万バレル減少した136万バレルだった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で174万バレル減少した日量1872万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安の一つとなる日量2000万バレルを2週間ぶりに下回った。今週は原油在庫が325万バレル増加、ガソリン在庫が582万バレルの増加、留出油在庫が266万バレルの増加となった。ガソリンや留出油だけでなく、灯油や重油、エタノールなど全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で1490万バレル増加した16億9270万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品のスポット卸売価格となる。ガソリン卸売価格は約17セントの下落、ディーゼル燃料の卸売価格は約26セントの大幅下落、原油価格は3.6ドルの下落だった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 7/8 | 7/1 | 6/24 | 6/17 | 6/10 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.645 | 3.812 | 3.966 | 3.888 | 4.205 | 2.261 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 3.764 | 4.026 | 4.366 | 4.440 | 4.445 | 2.152 |
原油 (ドル/バレル) | 106.78 | 110.30 | 109.07 | 109.56 | 120.73 | 74.56 |
-は公表データなし
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果となる。ガソリン小売価格は前週比で12から13セント下落、ディーゼル燃料の小売価格は約11セントの下落だった。
小売価格 | 7/11 | 7/4 | 6/27 | 6/20 | 6/13 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 4.646 | 4.771 | 4.872 | – | 5.006 | 3.133 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.147 | 5.261 | 5.355 | – | 5.455 | 3.573 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 5.442 | 5.575 | 5.664 | – | 5.762 | 3.819 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 5.568 | 5.675 | – | – | 5.718 | 3.338 |
-は公表データなし
今後の見通し
アメリカの原油生産量は前週から10万バレル減少した日量1200万バレルだった。需要面では製油所稼働率が前週から0.4%上昇した94.9%となり、原油消費量は20万バレル増加した日量1664万バレルとなった。原油輸入量は前週比で日量16万バレル減少した日量667万バレル、輸出量が41万バレル増加した日量302万バレルとなり、365万バレルの輸入超過となっている。原油消費量・輸出量の増加と輸入量の減少があったが原油在庫は325万バレルの増加となった。
ガソリンは生産量が142万バレルの大幅減少、ガソリン輸入量は23万バレルの減少となった。一方で、ガソリン出荷量は135万バレル大幅減少、ガソリン輸出量は17万バレルの減少となった。ガソリン在庫は582万バレル増と増加に転じた。留出油は生産量が24万バレル減少、輸入量は3万バレルの増加となった。一方で出荷量は101万バレルの大幅減少、輸出量が24万バレルの増加となった。出荷量の減少で留出油在庫は266万バレル増と在庫増加に転じた。燃料小売価格はガソリンが12から13セントの下落、ディーゼル燃料の小売価格は11セントの下落だった。
全ての石油製品の出荷量は日量174万バレル減少した1872万バレルとなり、石油製品消費の好調さの目安である日量2000万バレルを2週振りに下回った。ガソリンやディーゼル燃料に加えてエタノールや液化プロパンなど全ての石油製品と原油を合わせた在庫は1490万バレル増加した16億9270万バレルとなった。
原油相場はインフレ率の上昇による金融引き締め強化への懸念から下落している。加えてアメリカ国内で石油製品の需要が低下していることや中国の新型コロナウイルスの対策強化により原油需要の先行き不安も売りを加速させている。特に中国に関しては続報に注意したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。